高校2年生の時
僕は放課後になると学校に居座って先生に締め出されるまで友達とカードゲームで遊んでいる時期があった
そんな時理科の科目を担当している教師に声をかけられる
「将棋のルール知ってる?」
話を聞くと今の囲碁将棋部には先輩1人しかおらずこのままでは廃部の危機
大会に出るための人数が足りないから大会に出たい先輩の為にも埋め合わせのきく人員が欲しい
とのことだった
将棋のルールだけなら知っているしなんなら大学入試で部活動やってたって言い張れるかもしれない
みんながやるならと思ってとりあえず参加した
1人だけいる先輩がめちゃくちゃ強い人で囲碁将棋どちらもイケイケって感じらしいけどとりあえず将棋だけやることになった
最初の1週間は戦術とか覚えるのが新鮮で楽しかったけど土日を挟んだら秒で飽きた
部活に行ってもカードゲームばっかやって遊んでた
覚えた戦術は飛車側の銀を前に進ませ隙あらば飛車を敵陣にぶっ込む「棒銀」と角側の香車の位置に王将を置いて周りをガチガチに固める「穴熊」の二つの基本的なところだけ
それもかなりの付け焼き刃
遊んでいても日付は進む
将棋の大会の日が来た
会場は横浜
参加者は僕と先輩、NOと言えないお人好しの友人Sの3人
まずはチーム戦だ
ルールは3人が一斉に対局して2勝した方が勝ちで
負け抜けではなく同じ勝率の相手と戦ういわゆるスイスドロー形式
大会3日前に将棋ウォーズというアプリで3戦くらいして対局時計の使い方教わっただけのにわかが大会で勝てるはずもなく
3人の中で順調に1抜け(速攻負け)して横の対局を眺めていた
1戦目の対戦相手がそこそこイケメンでびっくりした思い出ちなみに2戦目で奇跡的に上手くいって詰将棋っぽい王手まで持ち込めたが普通にミスって捲られて負け(その後の感想戦でこうされてたら負けてましたと相手から言われた)
なんだかんだで3戦目
負けすぎてもうやる気なんてないけど横にチームメンバーいるし手は抜けない
そんなことを思いながら席に座っていると相手の学校がきた
この場にいるのがつまらなそうな顔をしているやる気のないオーラ
天然パーマで髪はボサボサ
指紋のついたメガネをかけたボーッとした男だった
歩を3つつまみ、転がす
相手の先行
初手で相手が棒銀だとわかった
全く勉強していなかったとはいえ同じく棒銀使いとして対策としてやられまくった対応をすると相手の動きが怪しくなった
僕が言えたことじゃないけど多分ろくに練習していないんだろう
素人同士の一手先のことすら何も考えない今の盤面だけ見る将棋が始まった
穴熊でマウント取ってなんとか勝てた
先輩の個人戦が始まるためドロップして午前中に僕とSの大会が終わった
個人戦で二級だか一級だかの同格の相手と戦う先輩はピリついた静かな会場ながらとてもイキイキしていて楽しそうだった
時刻は昼の12時少し前
先生がお腹空いてるでしょと中華街でご馳走してくれた
とても美味しい炒め物だった
でも心の中は申し訳ない気持ちでいっぱいだった
3戦目の対戦相手
まるで僕みたいだった
やる気もなく、とりあえずで参加した将棋の大会
大会に向けて頑張って戦術を覚えることもなく雑に覚えてコテンパンにやられる
今大会の最下層組
僕の"格"コレかぁ
対戦しながら思ってた
陰キャミラーマッチ
もっとちゃんと将棋やって対戦相手にとって時間の無駄な相手としてではなく、ちゃんと対局相手として対面できればよかった
そう思った
家路に着く
いつも通りゲーム起動
頑張ろうと思ったけど将棋やる気は起きんわ
残りの高校時代もずっと遊んで過ごした
高校3年生になってサボってたのに他に人いなくて部長になったけど願書に書くこと増えてラッキーくらいにしか感じなかった
人は変わらん
おわり